社員ブログ

いつも最期は食べられる

こんにちは。
東京支部の営業 兼 児童書の伝道師(自称)の田島です。

前回の投稿で、本文よりもアイコン  の方が面白いとのご意見をいただいたので(笑)、
今回はアイコンの由来について書きたいと思います。

 

 

アイコン画像の元ネタは『おだんごぱん』という絵本です。

皆さんには子どものころからなんとなく耳に残っている歌や、おはなしの一節はありませんか?
出どころは思い出せなくても、耳に残って離れない響き。
私にとっては『おだんごぱん』の歌がそのひとつです。
母が読み聞かせのときに、いつも節をつけて歌ってくれました。

『おだんごぱん』せた ていじ訳/わきた かず絵/福音館書店刊

おだんごぱんが食べたいというおじいさんのために、おばあさんは「粉箱をごしごし引っかいて」おだんごぱんを焼き上げました。しかし、食べられるのが嫌なおだんごぱんは、窓で冷やされている間に逃げ出します。
野原をころころころがっていくおだんごぱん。「あなたをぱくっとたべてあげよう」というウサギからもクマからもオオカミからも、「ぼくはてんかのおだんごぱん」「おまえなんかにつかまるかい」と歌いながら逃げ続けます。しかし口のうまいキツネに歌を褒められて、気を許してしまったばかりに最後は食べられてしまうのです。
ロシアののどかさを伝える力強くあたたかみのある画風。何より作中で繰り返し歌われるおだんごぱんの歌の軽快なリズムと、強かに逃げ続けるおだんごぱんのいきいきした表情が子どもたちの心をとらえる一冊です。

おだんごぱんがウサギやクマにオオカミ、そしてキツネに出会うたびに同じ問答、同じ歌が繰り返される構造は大人には単調に感じられるかもしれません。けれど子どもは同じ言葉を繰り返し聞くこと、知っている場面に繰り返し出会うことに安心感と喜びを覚えます。何度も同じ本を読まされてうんざり顔のご家族をものともせず、気に入った本を「これ読んで」と何回でも嬉しそうに差し出してくるのです。
子どもにとって世界は未知のもので溢れています。未知なるものに日々触れ、目覚ましいスピードで成長していく子どもたち。自分が知っているもの、好ましいと思ったものに繰り返し触れて確かめながら、より広い世界へと一歩ずつ歩を進めてゆく勇気と自信を得るのだと思います。何度でも聞きたい言葉、繰り返し読んでほしい本との出会いは、その成長を支え後押しする何物にも代えがたい経験なのではないでしょうか。

……ちなみにアイコンは調子に乗って食べられる寸前のおだんごぱん。皆様はおだてや甘い言葉に乗せられて身の破滅を招くことの無いよう、くれぐれもお気をつけくださいませ。


※この作品はヨーロッパ各地に類話があり、日本でも似たような(おいしそうなパンやケーキが言葉遊びを繰り返しながら逃げていく)おはなしが多数翻訳されています。代表的なものをいくつかご紹介します。


『ホットケーキ』 東京子ども図書館編/大社 玲子さし絵/東京子ども図書館
おかあさんが七人の子どもたちのために焼いたホットケーキがフライパンから飛び出して……子どもに語って聞かせることを前提に再話されており、「オジサンポジサン」「アーヒルガービル」など、言葉遊びのリズミカルさが特に際立っています。


『にげだしたかたやきぱん』 間所 ひさこ文/太田 大八絵/フレーベル館
ぼうやが焼けるまで番をしていたかたやきパンが、かまどの戸からポン!と逃げ出した……動物だけでなく大人も子どもも一緒になってパンを追いかけるバリエーションの豊かさと、「つかまるもんか、やーい」というかたやきパンの憎たらしさがポイント。

 
『パンぼうや』 マーシャ ブラウン作・絵/おがわ きよし訳/童話館
おじいさんがおばあさんに頼んで焼いてもらった丸いパンが逃げ出す……『三びきのやぎのがらがらどん※』などで有名なマーシャ・ブラウンによる作画で、躍動感のあるダイナミックなイラストが特長です。
  ※『三びきのやぎのがらがらどん』 マーシャ ブラウン絵/せた ていじ訳/福音館書店
    表紙に見覚えのある方も多いのでは……?
                              

            


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