第一章:ピンクと沈黙とカレーと、あとよくわからん紙コップ
こんにちは。営業事務の木戸です。
今日は、うちの職場に存在する“謎の人類枠”──北代さんについて記録を残します。
9:05 ピンクのなにかがスライドしてきた
出社してエレベーターを降りた瞬間、視界の隅をピンクの物体が通過。
よく見ると、
・ピンクのカーディガン
・ピンクのマスク(左にだけ星シール)
・ピンクのスリッパ
・ピンクの紙コップ(「K4」と書かれている)
何がどうなってそうなったのかは分かりませんが、「おはようやで〜」とゆるく話しかけてきたので、どうやら人間のようです。
※本人いわく「そのへんのオッサンやで〜」
嘘です。
12:00 カレーを注文→全部混ぜる
昼。カレー屋での注文もスムーズでした。
「全部のせ、ルー多め、“ちょい冷め”で」
配膳された瞬間、フォークを手に取り、無言で全混ぜ開始。
・サラダ
・ご飯
・ルー
・漬物
・「すべての“個性”」が茶色に溶け合っていく
「味に期待せんようにした方が、逆に美味いんや」と言ってました。
ハードルを下げる努力の方向、おかしい。
13:10 会議で「ほぉ〜ん」しか言わない
午後の会議、北代さんの反応は全部「ほぉ〜ん」でした。
資料を出されても「ほぉ〜ん」
プレゼンが終わっても「ほぉ〜ん」
意見求められても「(考えて)ほぉ〜ん」
社長が入ってきた「ほぉ〜ん(低音)」
“ほぉ〜ん”で会議が前に進むのがまた怖い。
発言というより、存在がBGM。
14:30 紙コップ「K4」が気になりすぎる
北代さんの机に置かれていた紙コップの底には「K4」と書かれていました。
昨日は「K3」だったので、明日は「K5」だと思われます。
「記録や。人生のな」と言われました。
裏には「てんき:くもり」と書かれていたけど、誰も聞いてません
たぶん日記なんでしょうけど、なぜ紙コップでやるのかは不明。
15:55 謎のきたしろクイズが始まる
唐突にA4の紙を渡されました。
Q:この中で“やってない”ことはどれ?
1. コピー用紙で折り紙を作って全社員の机に置いた
2. 書類の端をなめてから渡した(クセ)
3. ネクタイにしょうゆかけて食べようとした(間違い)
全部アウト。
正解は「2番。さすがにそれは無い」
“さすがに”の基準が謎。
17:45 黒いUSBを挿した瞬間、喋らなくなる
北代さんがPCに例の黒いUSBを挿した瞬間、静かになりました。
「お疲れ様です」と言っても無反応。
顔だけうすめるようにして静かに微笑んでます。
これは社内で知られている「喋らん日」です。
USB=静寂、という謎ルール。
まとめ:たぶん北代さんは“やさしいバグ”
毎日カレーを混ぜて、ピンクを着て、紙コップに日記を書いて、クイズを出して、USBで沈黙する。
でも誰も文句を言わない。むしろちょっと安心する。
たぶん、あの人が混ぜてるのはカレーだけじゃない。
空気とか、関係とか、会社のテンションとか──全部“ちょうどよく”してる。
次回予告:
第二章「北代さん、給湯室で豆腐に話しかけていた件」
──「そのままの君でええと思うで。崩れても美味いやん」